本音と建前 企画展『やなせたかし展 人生はよろこばせごっこ』世田谷文学館【観ちゃったから語っちゃった #002】

~観ちゃったから語っちゃったとは~
お金を払って観た映画やエンタメなど、観たものの中で語りたいなあと思ったものがちゃった・ちゃったで出てきます。
基本的に流行に乗って何かするタイプではないので、更新はあまりしない予定。

※ネタバレ全開のつもりなので注意

概要:アンパンマンの生みの親・やなせたかし(1919-2013)の初の大規模巡回展です。漫画家、詩人、絵本作家、イラストレーター、デザイナー、編集者など多彩な活動を繰り広げたやなせは、極上のエンターテイナーでもあります。彼は「人を喜ばせること」を、人生最大の喜びとしていました。

苛酷な戦争体験、家族との別れ、様々な人との出会いに揉まれ、「なんのために生まれて、なにをして生きるのか」を自分に問い続けたやなせが辿り着いたのは、かっこ悪くても、本当に困っている人に一片のパンを、「あんぱん」を与えられるヒーロー像です。

本展は、2026年にやなせたかし記念館アンパンマンミュージアムが30周年を迎えることを記念し、原画約200点を中心に、「やなせたかし大解剖」「漫画」「詩」「絵本/やなせメルヘン」「アンパンマン」のテーマで作品を紐解きます。私たちに勇気を与え続ける作品を是非ご覧ください。

やなせたかしは広告の人

もう終わってしまいましたが、世田谷文学館でやっていたやなせたかし展に行きました。朝ドラの「あんぱん」も話題になってましたが、私は未視聴。ジョナサン・シガーが出たことは知ってました(笑)
そんな知識ゼロベースな中展示を観ましたが、まずやなせたかしって広告をやっていたんですね。復興を受けていたのは知っていましたが、その後漫画家を目指しつつ三越の公報でグラフィックデザイナーとして就業していたようで、あの有名な三越の包装紙(赤の牛柄みたいなやつ)、そのロゴがやなせたかし作でびっくり。他にもビールの王さまというサッポロビールの広告も観たのですが、サントリーのアンクルトリスみたいなやつって他にもあったんですね。やなせたかしといえばやっぱりアンパンマンですが、あのキャッチーさというか、わかりやすさはここからきていたのかと納得がいきました。
これは個人的な意見ですが、どの様なおものであれ本音を語るには建前が必ずいるものだと思っています。比喩ですが、人間として社会で生きるにあたっては、突然の裸の生々しさに嫌悪感が生まれてしまうんですよ。だから建前を使って図りあい、然るべき手順を踏んで裸に到達する。それが肉体であれ精神であれ。
やなせたかしは広告で培ってきた建前があり、かつ自分の経験から本音が作られているように感じます。創作物ではあるが商業的な建付けを欠かさずに、かと言って伝えたい思いについて手を抜くことなく入れ込んでいる。だから老若男女関係なく心を掴まれるのだと思いました。

創作物がイノセンス

やなせたかしといえば詩も欠かせないですが、なんで言葉があんなに純粋なんでしょうね。リチャード・ローティーの終極の語彙とも違うような感じ、突き詰めた感じもないのに芯を食っているような、生の心そのままの言葉というか、それが見事だなあと。
印象的だったのはアンパンマンのマーチ。初稿の原稿が置いてあり、赤字で現在の詩が修正として書かれているので比較が可能になっていたのですが、「たとえ胸の傷がいたんでも」が初稿では「たとえいのちが終わるとしても」だったり、「みんなの夢 まもるため」が「悲しみを消すために」となっていたり、他の詩の展示と比較しても相当強い思いを感じました。やっぱりやなせたかしの中でもアンパンマンは特別だったんですね。作品の構造と本当に伝えたかったことが一体となっている、そういう意味でアンパンマンはやなせたかしの発明だと思います。
私がお気に入りになったのは『しあわせよカタツムリにのって』ですね。もう仙人の域ですよねここまでくると、俺もしあわせに対して優しくなりてえ。
純粋なのは詩だけじゃないんですよね、イラストも純粋。『詩とメルヘン』の表紙もそう、シンプルデザインなのですが、それが心象風景を表すことに特化していて、気持ちが真っ直ぐ伝わってくるあのニュアンスが大好きです。画集欲しいなあ、出してくれないかな…

タイトルとURLをコピーしました